Interview 001
大切な人との時間は、条件付きじゃなくて良い
ブロガー やぶなおさんのひととき
「旅したい!」と唐突に思うことってありませんか?
美味しいものを食べに行きたい、自然に囲まれたい、仕事から離れてリラックスしたい。
旅の理由はさまざまあると思いますが、旅をした結果「自分の人生・幸せ」に向き合うことになった方もいます。
岡山県瀬戸内市牛窓にあるゲストハウス兼コミュニティスペース「Uni.House(ゆにはうす)」代表のゆりゆりさんは高校卒業後に就職をして、一人旅中に出会ったゲストハウスに魅了され、退職後5か所のゲストハウス(高梁、宮古島、タイ、東京)で働き、セブ島・オーストラリアの語学留学を経て岡山にUターン、24歳でクラウドファンディングを成功させて
「Uni.House」をオープン。
今回のインタビューでは、ゲストハウスに出会い、自ら作り上げる過程でゆりゆりさんが感じたこと・考えたこと、そして気付いたからこそ伝えたいことについてお聞きしました。
―Uni.Houseについて教えてください。
Uni.Houseはコミュニティスペース兼ゲストハウスです。レンタルスペースとして貸し出したり、交流できるイベントも開催しています。
宿泊だけじゃなくて、人との交流や出会いがある場を提供しています。
おしゃれさとかはあんまり意識してなくて、「おばあちゃんのおうち」みたいな雰囲気を大切にして、交流しやすい空間づくりをしています。
―Uni.Houseはどういう意味で名前を付けられたんですか?
「Uni.House」は「Unique/ユニーク」と「Universe/ユニバース」と「You and I」の意味を込めています。あなたと私が自分らしい人生を年齢・国籍・性別関係なく過ごせる、みんなにとって第二のホームのような場所を作りたくて。
多様な人々・価値観と出会う中で一人一人が自分らしく生きられる空間を作りたいと思って付けました。
私自身が色んな人生・生き方をしている人と出会うきっかけがなかったんですよね。
だから、日本中や世界中から旅人が集まったり、外国の人やいろんな人と出会うきっかけを作って、「あ、こういう人生のあり方もあるんだ」とか「こういう価値観もあるんだ」っていうのを知ってもらいたいという思いがあります。まずはその人が集まる場を作ろうと考え、作ったのがきっかけです。
―ゲストハウスを開くまでのお話を聞いてみたいのですが、ゲストハウスとの出会いは一人旅がきっかけだったとか?
元々、あまり一人旅をしたことは無かったんですが、日々の仕事に疲れて本当に身体的にも精神的にもしんどくて、友達と一緒とかではなく、一人で逃亡のようにふらっとどこかに行きたくなったことがあったんです。
その一人旅で、たまたま京都のゲストハウスに行ったんです。
その頃はゲストハウスっていう世界をまず知らなかったけど、当時あんまりお金がなかったので安く泊まろうと思ってヒットしたのがゲストハウスで。
「知らない人と相部屋ってちょっと怖いな」って思いながらも、「まぁ安いからいいや」っと思って泊まったんですけど、そこには普段出会わないような人がたくさんいて。
私はもともと邑久(おく)で生まれて岡山で育って、高卒ですぐ就職して働いていたのと、周りも18歳、19歳くらいで結婚して子どもを出産する友人も多かったので、自分の人生を楽しんでる人とか、旅をしながらとか、いろんな人生を過ごしている人とかと出会うことがなかったんです。
一人旅で泊まった京都のゲストハウスには旅人とか海外から来ている子とかもいて、すごく視野が広がったというか、「こんな世界もあるんだ」「こんな人も居るんだ」っていうのを知りました。
世界中を旅しながら自分の人生を楽しんでいる人たちの世界を初めてゲストハウスで知ることができたんです。
―それからすぐゲストハウスを?
その当時はそういう意識は無くて、ただそういう人生の価値観とか人生の在り方とかもあるんだっていうのを知ったくらいだったんです。
一人旅に出る前の自分はずっともやもやしてたので、もっといろんな人に会いたい、もっといろんなことを聞きたい、「私、今後どうしよう?」っていう思いの答えを見つけたくて、そこからゲストハウスを巡るようになったっていう感じですね。
何か変えたくて、みたいな。京都に行った後は広島、大阪、神戸、いろんなところに行きました。
―モヤモヤしてたのはどういったことだったんですか?
私は元々、高校卒業後の進学資金を貯めるため、あとは実力をつけるために縫製会社に入ったんですけど、自分に合わず、しんどくなってしまって。
仕事と掛け持ちでアルバイトもしてお金を貯めたりしてたんですけど、「果たしてそこまでして大学に行きたいのか?」とか、空いた時間には「本当に自分のしたいことをやってるか?」って言われたらたまにしかやってない。
自分の人生ほんとにどうしたいんだろうっていうのが分からなくなってしまって。
でも、お金は貯めようと思ってずっとバイトは続けてっていう感じでした。
「何のスキルも資格も持ってない高卒の私に何が出来るんだろう」って自問して、自分の人生楽しくないな、面白くないな、このまま60歳、70歳までこの会社にいるのかなって漠然としたもやもやをずっとしていたんです。
―それから、ゆりゆりさんの中で「ゲストハウスを作ろう」と思うようになったきっかけがあったんですか?
同級生でシンガーや漫画家として活躍している子がいたんです。
自分の好きなことをしていてキラキラ輝いている姿にすごい刺激を受ける一方で、自分の現状にモヤモヤしてました。
そして、ゲストハウスで出会った人たちと一緒に過ごして語り合う中で、「私もこうなりたい」っていう思いがどんどん強くなっていったんです。
それから、「私も素敵な人たちが集まるあたたかいゲストハウスを作ろう」と決心したんです。
そのあと一歩踏み出してから、「人生こんなにも楽しいんだ。自分が知らなかっただけでこんなにも選択肢はあるし、こんなにもいろんなことできるんだ」ってことを知りました。
これまで岡山にいたときは「岡山は何もない」と思っていて、あまり良い捉え方が出来ていませんでした。
でも、今は帰ってみてちょっとしたことでもUni.Houseのみんなとすごく幸せに感じられているし、牛窓という場所の自然にすごく助けられているのを感じてて、「見方次第」「自分次第」で幸せをすごく感じられることを実感しています。
4、5年前は漠然と悩んでて、人生にすごくモヤモヤ絶望してて、でも自分次第で変われるっていうのをすごく自分が感じたからこそ伝えたくて。
なおかつ私と同世代の人たちで、毎日仕事を頑張っていたり、結婚や出産もするかしないか日々に色々悩みを抱えている人にこそ、伝えたいです。
本当はシンプルなのに難しく考えちゃう人に、色々刺激を与えられたらなと思って。
そこがいつも心にあって「頑張ろう」って思えます。
―ゲストハウスを運営していて、大変なことはありませんか?
現在Uni.Houseでは長期滞在者を受け入れ、海外の子たち7人と生活を共にしています。
みんな国も違うし、仕事も違うし、個性もバラバラで何もかも違うんですよね。
当たり前なんですが食べ物とか、生活とかちょっとしたことでも文化や人柄によって違いがあるんです。
例えば、ついつい外を裸足で歩きまわって、そのまま部屋に上がっちゃったり、何日も洗濯物を外に干しっぱなしだったりとか。
そういうのも最初は気になっちゃって「私の場合はこうだから」みたいなのがあったけど、私の普通がみんなの普通と一緒ではないこともあることに気づき、お互いがお互いを理解しあうこと、尊重しあうこと、受け入れ合うことが大切だと感じました。それは日本人同士であっても。
みんな違って、みんないい。
だからこそ、私も自分らしくいられるようになりました。
前までは他人の目を気にして見た目とかも着飾っていたんですけど、今はもっと気楽に好きな格好をしていますね。(笑)
―Uni.Houseで自分らしさを大切にしていると、優しい気持ちになれそうですね。
すごく生きやすくなるなと思います。
私はこれまで「こうしないといけない」とか、「こうするべき」で考えてたんですよ
例えば、親の期待に沿いたい自分と「私にはそうじゃない幸せがある」って思う自分がいたりして。
特に、海外に行くまでは強く思ってました。
それも自分がそう思ってるって気付かなかったんですよ。その当時は別にそれが普通だと思ってるので。
今から思うとゲストハウスに魅了されたのも、いろんな人が居るから「あっ、自分が自分でもいいんだ」っていうのを感じられたのが魅力だったんだろうなって。
その当時はただ、温かい空間とか面白い人たちに魅了されて好きになったんだろうなって思ってたけど、今から考えるとそう感じますね。
自分が自分でいて良いんだとか、だからゲストハウスに惹かれたんだって感じたのは、もう本当につい最近です。
7人で生活してるとほんと皆違うので、だからこそみんなそれぞれが自分らしくいるし、自分の人生生きてるし、でも一緒に共同生活出来ているのはその違いを受け入れているからだということを感じています。
―Uni.Houseの今後やゆりゆりさんの今後の目標をお聞きしていいですか?
ゲストハウスにもっと気軽に来れるようなきっかけを作っていきたいと考えています。
ゲストハウスってちょっとハードルが高いかな?と思っていて。
岡山に戻って来た時に「ゲストハウスってなに?」って方もいましたし、「ゲストハウスって海外の子しか行っちゃだめなんでしょ?」みたいな方もいたりとか、海外の子としゃべりたいけど宿泊したり、イベントってなるとちょっとハードルが高いですよね。
私もゲストハウスってなんかちょっと意識高い人がいるんだろうなみたいなイメージはあったので。(笑)
だから、気軽に来れるきっかけや知れるきっかけを作って、誰でも楽しんでもらえるようにしたいなあと計画中です。
いろんな方に来てもらって、いろんな方と出会うきっかけを作っていきたいなと計画してます。
最近では、小さなお子さんや、常連さんで9歳の子は何回も来てくれていてすごく嬉しいですね。
―牛窓にUni.Houseがあるかないかでその子が見る世界は全然違ったものになったでしょうね。他にもゲストハウスをやってて良かったなと思った経験はありますか?
Uni.Houseをオープンしていなかったら、手伝ってくれる仲間たちとも、ゲストの方たちとも出会えてないから、これまで繋がれた人と出会えたのがすごく良かったなって思います。
もう一つ、Uni.Houseに来たことがきっかけで、海外に友達が出来て会う約束をしたとか、
Uni.Houseで英語を話すのに慣れて、電車に乗るときに外国人に話しかけたら話が出来てすごい嬉しかったとか。
ここに来たことがきっかけで、何かが生まれていって彼らの人生に何かしらの影響があったっていうのを教えてもらったりとか聞いたりするとすごい嬉しいですね。
―最後にゆりさんにとって「ひととき」とは?
幸せな感じを思い浮かべますよね。
Uni.Houseはいつもみんなで楽しい雰囲気になっているので、そんなひとときが大好きですし、たまに自分の時間が必要だなって思ったら、海に行きます。
ビーチで仕事をしたり、本を読んだりするんですけど、そういう時も「あ~、幸せなひとときだなあ」って思いますね。
―ひとりで過ごす時間もお好きなんですね。
牛窓の自然がすごく素敵なんですよ。
私は、牛窓の自然にすごく助けられていて、もしこれが都会でゲストハウスやってたらまた違ったなって思うんです。
自分と向き合う時間や、Uni.Houseでの時間も、考えたり、まとめる時間がすごく大切だと思っていて。
だから、牛窓のすごくゆっくりした空気感とかノスタルジックな感じがすごく合ってるんです。
なので、Uni.Houseでは「ここで少しリセット」みたいな考える時間、そういうのも提供したいなって思ってます。
みんなと楽しく過ごす時間も、ひとりで自然の中で自分に向き合う時間も、私の中ではどちらもおすすめなひとときです。
自分らしく生きるって難しいですよね。
らしくありたいと焦ってしまうと、そのらしさのなかには「こうであるべき」らしさや「こうであるはず」のらしさが混ざっていることってあるような気がします。
ゆりゆりさんは人生に悩み、ゲストハウスに出会い、惹かれ、自分のゲストハウスを作り上げました。
こう書いてしまうと定番の自分探し旅の成功例のように見えてしまいますが、
ゲストハウス完成後もゆりゆりさんは「自分」というものとの対峙を続けてきました。
自分が自分であることは他者がいなければ意識できないこと。
Uni.Houseでの他者との出会いや、仲間との生活の中で他者を受け入れ、自分も受け入れることができるようになったと語ってくれました。
ゆりゆりさんの海辺でリセットする時間の「ひととき」はそれまでのものすごく分厚い時が刻まれていく「ひととき」なんだなと感じました。
Interview 001
ブロガー やぶなおさんのひととき
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